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【市民リポート】家族で行きたい!巨匠たちの特別な10代を覗き見。  上田市立美術館『巨匠たちの10代~世界の巨匠たちが子どもだったころ~』

2022.03.18

市民リポーター 松島

家族で行きたい!巨匠たちの特別な10代を覗き見。
上田市立美術館『巨匠たちの10代~世界の巨匠たちが子どもだったころ~』

 

展覧会のポスター

 

突然ですが、皆さんは、美術館を訪れたことがありますか?美術に興味のある人もない人も、モネ、ムンク、ピカソといった芸術家の名前を耳にしたり、教科書で見たりしたことがあるという人もいるはず。世界中で評価されるそれらの作品の美しさや芸術性の高さに、「自分にはこんなものは描けない」と圧倒されることもしばしば。ですが、彼らの10代の頃の作品を見たことがありますか?芸術の世界で大きな功績を残した巨匠たちも、子どもの頃の私たちと同じく「好きなものを自由に描く」という幼少期を過ごしていました。上田市立美術館では、そんな巨匠達の幼少期をちょっと覗き見ることができる展示会が開催されています。

 

 

美術館初!?
AR画像で巨匠たちの幼少期と大人になってからの作品を比較して楽しめる!

 

ラウル・デュフィ《競馬場のギュギュスト》1890年(13歳)おかざき世界子ども美術博物館蔵

 

『巨匠たちの10代~世界の巨匠たちが子どもだったころ』では、海外作家としてモネ、ピカソ、ロートレック、ラウル・デュフィ、パウルクレー、エゴン・シレーなどが展示され、日本作家として青木繫、岸田劉生、平山郁夫、池田満寿夫、中島千波などの10代の頃の作品が展示されています。
これらの作家の名前を聞いてぱっと作品が思い浮かぶ人もいれば、なかなか作者と作品が結びつかない人もいると思います。そんな方にも安心。今回の展覧会では、上田市で活躍されているエプソンアヴァシス株式会社とコラボし、タブレットガイドが用意されています。すべての作品ではありませんが、タブレットを展示している作品にかざすと、画面上に大人になった巨匠たちの代表作が映し出されます。AR画像を使って、幼少期の作品と大人になってからの代表作の共通点や違った点を見つけてみるのも楽しそう。

 

代表作とは違った画風を見せる巨匠たちの10代を覗き見。

 

私は美術館に行くことが好きで、モネやピカソの大人になったころの作品も何度か目にしてきましたが、彼らの子供時代の作品は見た事がありませんでした。それもそのはず。クロード・モネの幼少期の作品などは親族を中心とした個人コレクションに保存されており、目にする機会がかなり少ないのです。ですが、今回の展覧会では貴重なモネの17歳当時の作品『森の散歩道』が展示されています。
今回は私の心に強く印象に残ったものをご紹介。

 

 

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《馬上の二人の兵士》1881年(17歳)おかざき世界子ども美術博物館蔵

 

 

まずご紹介するのはアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックが17歳の時に描いたとされる『馬上の二人の兵士』。作品紹介文を読んでみると、彼は14~15歳で2度の事故に遭い両脚を骨折し、足の成長が止まってしまうという痛ましい経験をしたそうです。そんな中、馬が好きであった彼が描いたのがこの作品。足が不自由で辛い想いをしたとしても、大好きな馬を絵で表現することに楽しさを感じていたのかもしれません。作品の背景を知ることで、作者の想いをより深く感じ取ることができます。
続いて、パブロ・ピカソの『男性頭部石膏像のデッサン』。20世紀最大の画家とも言われ、キュビズムという技法を創出するなど鮮烈な個性で人々に衝撃を与え続けてきた作家です。代表作にはスペイン内戦時のドイツ空軍による無差別爆撃を描いた『ゲルニカ』、愛人ドラ・マールをモデルとして『泣く女』などがあります。独自のスタイルを生み出していったピカソですが、彼の10代の頃の作品は石膏像をデッサンした、いかにも美術学生らしいもの。石膏像のデッサン…というと、大抵の美術大学の入学試験に出題されている美術の基本であるという印象を持ちます。ピカソのような巨匠も、若い時代に基礎を積み重ねて、その上で独自の技法を生み出していったことが伺えます。「基礎を積んだ上での発展」という、何かに挑戦する上での重要なことを学べた気がしました。

 

中島千波《母の顔》1956年(11歳)おかざき世界子ども美術館蔵

 

最後は、中島千波。作者の代表作が浮かばなかったので、ここでタブレットを使ってみました。すると画面上に酔いしれるような美しい桜の絵画作品が。中島千波は小布施町出身の画家で、人間を題材とした「衆生」「形態」などのシリーズの他、桜をはじめとする花鳥画など多彩な画題に取り組み、独創的な美の世界を謳い続けています。
そんな中島千波が、11歳のときに描いたとされる『母の顔』という作品がこちら。笑顔であるのか、怒った顔であるのか。感情の読みとりづらい表情を浮かべる『母の顔』ですが、当時の彼はどのような想いでこれを描いたのか、考えを巡らすのも面白いかもしれません。

 

 

「美術を通して、なにか子どものために生きるヒントを与えたい」

 

今回、この展覧会を企画した学芸員の小笠原さんに取材させて頂きました。上田市立美術館は、子ども達が文化芸術を小さい頃に経験し成長する機会を与えたいという想いのもと、子どもアトリエという施設を常設しているそう。そんな想いを持った美術館が、世界の芸術家の子供の頃の作品を展示しているおかざき世界子ども美術博物館から、その作品をお借りして開いたのが今回の展覧会。小笠原さんは
「子ども達が、自分と同じ年齢の頃の芸術界の巨匠たちの作品を見て、何かを感じて欲しいと思っています。『やっぱり有名な人は小さい頃から凄いな』であったり、『これなら自分も描けそう』であったり。そこから自分の可能性や自信を持っていただきたいなと思っています」と話します。
また、展覧会場の最後の方にはテニスプレーヤーの松岡修造さんやお笑い芸人の鉄拳さんの幼少期の作品も展示されていますが、その意図については、「小さい頃から絵が得意でも、スポーツ選手や詩人など美術とは違った分野に進んだ方も紹介したい」という想いが。小笠原さんは「ぜひ、家族でこの展覧会にお越しいただき、会話を楽しんで欲しい」と話します。
皆さんも、今度の休日は家族で上田市立美術館に行ってみるのはどうでしょうか。

 

展覧会:巨匠たちの10代~世界の子どもたちが子どもだったころ~
会場:上田市立美術館 企画展示室
アクセス:JR北陸新幹線・しなの鉄道・上田電鉄別所線上田駅から徒歩7分、上信越自動車道上田菅平ICから車で15分
会期:2022年2月11日~3月21日
開館時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
休館日:火曜日
観覧料:一般800円(700円)、高・大学生300円(200円)、小・中学生200円(100円)
*( )内は20名以上の団体料金 *障害者手帳携帯者は半額、その介助者1名は無料
HP:https://www.santomyuze.com/museum/

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