上田市シティプロモーション

文字サイズ

【市民リポート】◆信州うえだ名物 美味だれ焼き鳥 100年フードに認定◆┅┅  美味だれ誕生の立役者 池松勇樹という男  ┅┅

2023.10.03

市民リポーター  清水

【市民リポート】◆信州うえだ名物 美味だれ焼き鳥 100年フードに認定◆
┅┅  美味だれ誕生の立役者 池松勇樹という男  ┅┅

もはや知名度も全国レベルの美味だれです。
県外の親戚は、上田でのお土産に丁度いいと卓上サイズを箱買いして帰ります。
我が家でも焼き鳥は勿論、野菜炒め、炒飯等々、使っておけば間違いなしの万能だれとして、1リットル入りのファミリーサイズを常備しています。

広くとられたスーパーの美味だれコーナー

 

『これ使っとけば何でもうまい』

 

甘口辛口、お好みでどうぞ

 

❰ 池松勇樹さん ❱
『地域ブランドプロデューサー』42歳。
この方語らずして美味だれは語れず┅┅しかし、はてさてどう紹介したものやら。
大変な引き出しの多さに、引き込まれる様にお話を伺ってきました。
フリーペーパーうえだNaviの編集長、美味だれで委員会の事業部長など多方面で活躍されていますが、この日は風情ある柳町は『柳町屋』の店主さん。

柳町屋
『アップルたまごタルト』『パンケーキみたいなリンゴどら焼き』は絶品。お試しあれ

 

池松さんのお話 ∶ 美味だれ誕生まで
2010年のことです。
上田を更に元気にしたいとの思いで、ご当地グルメブーム、B-1グランプリ開催の波に乗ろうじゃないかと模索を始めました。
そんな折、長野、松本、飯田、上田の県内4ヶ所で、ご当地グルメのイベントをとの動きがあったのです。
『ご当地グルメ大集合』に的を絞って上田のグルメについてリサーチを開始しました。
あんかけ焼きそば? 馬肉うどん?┅┅はい、もちろん候補に上がりました。

しかし焼き鳥で調べを進めていくと、興味深いことにぶち当たりました。
どうも我々地元民は、他から見るとかなり独特な焼き鳥の食べ方をしている様なのです。
つまり┅┅、店にはテーブルやカウンターに壺やビール用コップみたいなグラスが置かれている。
それにはニンニク醤油のたれが満ちていて、お客は串をそのたれにドップリ浸けて食す。(二度付け禁止)
今では焼き鳥と共にニンニク醤油だれの入った器が出されて、お客さんが好みでタレをかけて食べるスタイルが多くなっている感じですれど┅┅。
上田市民にしてみたら至ってノーマルなこの食べ方は、外の方々からすると非常に珍しい食し方らしいのです。

この上田特有の食文化のルーツはどこにあるのか。
イベントを目前に、主だった焼き鳥屋をくまなく廻りました。
そりゃあ、当時の焼き鳥屋は暖簾をくぐるのにも勇気がいるような、いわゆる猛者揃い。
お店を支える常連のお客さんたちがいて、店ごとに暗黙のルールがあったりします。
店の看板を大事に次の世代に繋いで行こうなんて気持ちは希薄で、その日お客さんに旨い物を食べてもらうことに情熱を注ぐ人たちです。
足を運んでいるうちにどの店でも、『その食べ方は鳥正(とりまさ)さんが始めたらしい』と異口同音に答えをもらえたのです。
日本が高度成長期の活気に溢れた昭和30年代。
お父さん達は仕事帰りに焼き鳥屋に立ち寄りちょっと一杯、家へのお土産も包んでもらう、日常のありふれた光景です。
鳥正が たれに浸けた食べ方を考案したのは丁度この頃のこと。

 

お話くださる池松勇樹さん

 

ニンニクたっぷりの醤油だれ、『鳥正』の焼き鳥の出し方をルーツとして、各店が独自の工夫を加えて甘口、辛口のたれを作ってきた、そういうことの様でした。

しかし『たれ』ではいかにも弱い。
ブランドとして確立できる様な名前を付けよう┅┅、仲間の一人が『おいだれ』の名を出して来たのはこのタイミングでした。
①信州上田の方言「おいだれ」┅┅親しみを込めた「おまえたち」の意味
②「美味しいタレ」
③「好みで後から追いダレ」
こんな意味合いを込めて、私たちはこれを あて字の『美味だれ』としたのです。

こうして『焼き鳥屋』でもない我々、上田を盛り立てたい市民有志によって、焼き鳥業界の外側で美味だれの名前が考案されることとなったわけです。
時の頃は同年7月。
さて、『たれ』の名前は決まったものの、グルメイベントのためには焼き鳥を出品しなければならない。
ここからが大変でした。
なにしろイベント開催の10月までには日がないンです。
地域に浸透させるためには何はさておき、焼き鳥屋にこの名前を認知してもらう必要があります。
そこで老舗中の老舗、ルーツの源の鳥正に「従来のタレを『美味だれ』とすること」の了承をとりに行くと「勝手にやってくれ」と言われたのです。
でもその「勝手にやってくれ」、私の耳には「承知した」に聞こえたんですよね。
これが『美味だれ焼き鳥』誕生までの経緯なんです。

池松さんが事業部長である市民有志の団体『美味だれで委員会』では美味だれを『すりおろしニンニクが入った醤油ベースのたれ』と定義しています。
それは決して『ニンニク風味の醤油』ではなく、あくまで『ニンニクたっぷりの醤油だれ』なのです。

 

美味だれ焼き鳥

 

池松勇樹さん∶
長崎生まれの上田育ち。
高校の建築科を卒業後、建築会社に就職。
その後も数々の業種で経験を積み、軽井沢プリンスホテルにドアマンとして就職したことで観光と出会う。
25歳で上田に戻り、様々な観光への仕掛けを考えるなかで美味だれを確立させる。
モットーは「昨日と同じ今日が嫌い、今日と同じ明日が嫌い」
『お金を稼ぐ』ことの前提に『相手の役に立つ』があること。
『人の役に立つこと』、これが最も幸せを感じることで、いわば趣味。

今年3月、美味だれ焼き鳥は文化庁の『100年フード』に認定されました。
非常に名誉なことで、今までの活動が認められた証なのですが、池松さんは「あと数年後、現在現役の経営者が職を離れた時、誰が店の看板を繋いで行くのか┅┅ま、単に自分が今後も美味だれ焼き鳥を食べていきたいからやってることなんですよ」と笑っていらっしゃいました。

池松勇樹さん、『隠れ家えん』の焼き鳥を手に

 

現在、上田市内に60軒ほどある焼き鳥屋のほとんどが『美味だれ』を使っています。
地域の観光資源を発掘して上田市の活性化に力を尽くす池松さんが見つめるのは、更に更に先なのでしょう。
今、目に見える形で一定の成果を収めた『美味だれ』
「閉める気満々だったのに、お前らのおかげて更に10年、老体にムチ打たなきゃならなくなったわ。」
池松さんと有志の方々は焼き鳥屋の皆さんに、そう言われているそうです。
辛口の、正に愛情のこもった言葉ですよね。

 

 

 

写真撮影協力∶
やおふく秋和店
上田市観光会館一階売店  ありがとうございました

 

 

 

 

関連タグ